訪問看護ストーリー
Story
娘さんと二人暮らしのAさんは骨折して入院手術をされました。病院でリハビリをして歩いて退院されましたが、退院後しばらくたって思うように歩けなくなってしまいました。それから訪問看護が開始になりましたが、怖さもあってか消極的でなかなか思うようにリハビリが進みませんでした。それでも少しづつ前向きに取り組まれるようになってきました。
そんなある日の訪問の時のことです。Aさんから「私、仏壇の前の椅子に座りたいのよ。あの椅子に座れればタンスの中の整理とか用事も出来るし。でも1人で挑戦してみるのは心配なの。」と話がありました。私は、Aさんがやる気になっているこの機会を逃してはだめだと思い、「娘さんと私がいるので何かあったら必ず支えるから、是非やってみましょう。」と強く伝えました。
するとAさんは、恐る恐るベッドから立ち上がり、両手の杖を支えにゆっくりと歩き出し、仏壇の椅子のところまで行くことが出来ました。
Aさんが「あ~良かった!!これでお父さんに手を合わせることが出来るわ。ずっとここで手を合わせられなかったんですもの。」と嬉しそうに言いました。娘さんとAさん、そして私は3人で顔を見合わせ笑顔になりました。私はAさんがこのような気持ちでリハビリを頑張っていたんだとわかり、感激しました。私はAさんの希望が叶って本当に良かったと、とても幸せで嬉しい気持ちになりました。
そして今では外歩行や階段昇降の練習をされるまでになったAさんです。
後日談ですが、またある時の訪問の時に、Aさんが「今日はお父さんの命日なの。お線香を無事にあげられることが出来たわ。」と満面の笑みで教えてくれました。お線香をあげるには椅子に座ってでは出来ず、中腰でかがまないと出来なかったそうです。それがわかったAさんはご主人の命日に向けてひそかに予行練習を重ね命日当日を迎えられたと話してくれました。予行練習を重ねるAさんを想像するととても微笑ましく温かい気持ちになりました。