訪問看護ストーリー
Story
健和会(協議会)訪問看護ステーションです。こんにちは!
去る6月27日(木)、みさと健和病院の講堂をお借りして事例検討会を開催しました。
今回の事例はがんのターミナル期にある利用者で、7ヶ月に渡る長期間の関わりの後、ご本人の希望通り自宅で亡くなられたAさんです。
「入院したくない」「痛みをとって欲しい」というAさんでしたが、主治医としては、まだ先が長いAさんに今後起こり得る苦痛が見えるだけに、そうなる前に対応したいという考えがありました。
入院しての治療や処置、その結果複数のチューブが入った状態での退院。退院後も続く点滴。
看護師としては、医学的に必要と分かっていても点滴や注射をするのは辛く、
…これがAさんにとって最善の選択なのだろうか。
…Aさんの望みと違うのではないだろうか。
…Aさんは本当に理解して選択しているのだろうか。
―と、スタッフたちは葛藤の連続でした。
訪問診療所の看護師長が事例のAさんをこのように紹介していました。
「Aさんの人間性が素晴らしかった。痛くても感情的にならない人。うつ伏せで過ごされていたが、鏡を用いて背中側にあるテレビを見ながらタバコを吸うのが楽しみだった。布団がいい、と最後までベッドを入れずに布団で過ごされていた。周囲の意見を受入れてしまう人だから、看護師も悩んだ。」
Aさんの苦痛が起こるたび、処置が変更になるたび、本人やスタッフから何らか不安の声が出るたび、ケアマネが会議を招集しました。何度も何度も本人を交えて会議が開かれました。
往診の医師・看護師、訪問看護師、ケアマネ、ヘルパー、訪問薬剤師、訪問入浴、福祉用具業者…
Aさんは一人暮らしでしたが、親戚の方も会議に同席してくださいました。
会議だけでなく、今回の事例で際立ったのは、インターネットでの情報共有システムの活用でした。
Aさんに関わる全ての人々…職種や事業所の違いがあっても、ネットで情報共有や情報交換ができるシステムが三郷市にはあるのです。そのシステムを使って、時には写真も交えて、連日情報が関係者間を飛び交いました。
Aさんは一人暮らしであっても、全く孤独になることなく支えられ、自宅で永眠されました。
事例検討会には49名もの多数の参加者がありました。
その中でケアマネージャーさんが10名も参加してくださいました。ケアマネージャさんの参加は視点が広がり、とでもありがたいことです。
病棟からも4名の看護師が参加し、うち3名は地域看護(訪問看護)コースの看護師です。
グループに分かれて意見交換し、「本人の意思を尊重するためにどのように関わったらよいか」検討しました。
事後アンケートへは、
・その人がその人らしく自宅で暮らすために、皆が考え共有し、A氏も自分の想いを伝えられた7ヶ月だと思いました。
・意志決定、確認のプロセスを大事にする事で、本人も納得できていたのではないか。
・終末期の利用者の揺れ動く心を再確認できた。
・担当者会議など関係者で集まって、本人の意思の下、方向性を決めることができていると感じ、見習いたいと思った。
・いいチームを作ることを目指したい。
――― 同様な意見が多数出されました。
いま、ACP=人生会議の必要性が国内で叫ばれており、関心のある方も多いと思います。
「ACPガイドラインについて、もっと勉強しようと思います。」という声もあり、今回の事例はACPについて理解する上でもとても良い事例だったと思います。
そしてもうひとつ、
インターネットでの情報共有システムが私の地域でも欲しい!!
という声も沢山聞かれた事例検討会でした。