訪問看護ストーリー
Story
大島訪問看護ステーションのAです。
私は病院からステーションに異動して、2月で丸4年になりました。
看護師は、病院でも在宅でも、患者さんや利用者さんに対して、様々な働きかけを行います。
4年たった今、病院と比較して思うのは、
家で暮らす利用者さんたちの返して下さる球のおもしろさです。
閉塞性動脈硬化症の90代の利用者さんがいました。
冬になり、足指がどんどん紫色になってしまい、医師からは軟膏を塗るように指示されましたが、
「軟膏のベタベタがシーツや布団につくのがイヤだ」と拒否されました。
私から勧めても拒否され、途方に暮れた訪問が続きましたが、
ある時その利用者さんは、自分で古いブラウスの肩パットを切り取り縫って、
足指を覆うようにしたのです。
肩パットは足指の大きさにピッタリで、保温効果もあったため、
それから足指の色は少しずつ良くなっていきました。
病院に入院している患者さんは、どうしても病院の規則で自由を制限されてしまいますが、
家で暮らす人生経験豊富の利用者さんたちの工夫は、
若輩者の看護師の予想をはるかに超える豊かなものです。
私たち看護師は、医療的な正解は分かっていなければなりません。
あるいは分からない場合も、分かるまで調べるのが務めです。
でも訪問看護師として私は、それを踏まえた上で、
利用者さんに一方的に医療的な正解を押し付けるのではなく、
人生経験豊かな利用者さんの希望を聞きながら、
どういうことならできそうか一緒に考えていく存在でありたいと、
4年経験を経た今思っています。
*江東健康友の会「けんこう」第123号より一部改定し、転載しました。